映画「散り椿」 せつない、そして美しい

妻から、スッキリする映画を見たいというリクエストでチョイス。
“そのこころ“ はハリウッドのアクション映画、という期待感が含まれているのは承知していたのですが、どうにも公開中の映画にちょうどいいのがない。
マーベルヒーローやバイオレンスアクションは上映しているけど、私も妻も好みではないです。二人は、ヒロイックサーガの中でも、史実に基づくものやファンタジーが好きなので、うまく当てはまらなかったのです。

仕方がないのでジャンルを考えずに上映中のものをザッピングしていて目に止まったのが「小泉堯史」の名前。
2000年に上映された「雨あがる」の監督さんです。日本アカデミー賞を受賞してます。

「雨あがる」は故・黒澤明が脚本を書いている途中に亡くなったという作品で、その脚本を黒澤作品で助監督をしていた小泉さんが完成させたものです。やりきれない気持ちに、しかし武士の潔さ、そして最後は人情味あふれる爽やかな幕切れを見せてくれる素晴らしい作品でした。

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で、
今回見た「散り椿」は小泉堯史は脚本で、監督は「劒岳 点の記」の木村大作というわけで、黒澤チルドレンのタッグではないですか。おお、これは、スッキリする映画に違いない、と、あらすじ・設定は見ずに決定。映画予告編好きとしては、予告編だけは見ます。すると、主演の岡田准一がめちゃくちゃかっこいいではありませんか。素晴らしい映像美。さすが稀代のカメラマンでもある木村大作。

いやぁ、ひたすら切なかった。けれど美しい。
スッキリする映画とは違うけど、心の琴線に触れる映画です。副題に「ただ、愛のために」と謳っています。

悲しい事件をきっかけに、友人を、家族を、それぞれが庇いあい、心を痛め、傷つき、それでも互いの気持ちと約束を守っていく。
エンディングの後は、「この先、たくさんの幸せが訪れますように」と祈らずにはいられませんでした。

殺陣は言うに及ばず、走る馬の緊迫した描写、あるいは、冬から春への「景色」と「部屋の空気」を使った心理描写が素晴らしいです。
ストーリーでは、8年前の悲しい事件の真相が明らかになるには、もつれた気持ちを一つ一つ解いていかなければならず、これがじれったく切ないのです。クライマックスで主人公の信兵衛が、思い出深い屋敷の、散りゆく椿を見てつぶやくセリフが、とても身にしみます。

それでは良い映画ライフを。

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