パソコンの快適さと設計思想

私のパソコンは2008年製、10年落ちです。
ThinkPad X200といいます。
x200
このPCで複数人のウェブ会議をしたいと思い、Bluetoothスピーカーを取り付けるために、Bluetoothのドーターボードを交換しました。新しい世代のThinkPad用のパーツでしたが前方互換しているようでしたので、変えてみたら何もしなくても動きました。

それまではタワー型PCが好きで、1995年に初めて自分のパソコンを持ってから2014年までの19年間、タワー型PCを使い続けていました。
なぜか?
その巨大な筐体ゆえ、ハードウェア構成を自分で全部思い通りに決められるからです。
頭脳に当たるCPU、作業場所であるメモリ、保存場所のディスクの3つは言うに及ばず、疲労度合いに影響するキーボードや意外と音が気になる冷却ファンだって好みのものに変えられます。

ただ、リビングに鎮座していたタワー型PCは、結婚して3年経った頃、ついに妻によって退去命令を下され、だったら中途半端なデスクトップよりもモバイルノートにしてしまえと相成ったわけです。

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で、条件としては、「軽い」「キーボードが打ちやすい」「タッチパッドが使いやすい」の3点でした。最初はNECのLAVIE Zを狙いましたが予算の関係であえなくアウト。
中古市場を見ていくうちに、ちょうど保守が切れたばかりのWindows XP搭載モデルがものすごく値崩れしていることに注目しました。

学生の頃は3D CGをやったり、巨大なプログラム開発をしたりしていましたし、NECに入社しても、スーパーコンピュータの周辺機器の開発部署でしたので、どういう計算がどういう負荷になるかとか、ネットワークのトラフィックの負荷計算とかは結構よく知っています。そんなわけでその時々でやりたいことに最適化できるようにタワー型PCをいじり倒していました。

で、2014年当時の結論として、年に1回くらいしかCGを描かなくなったし(年賀状だけ)、普段はOfficeソフトだけというPC利用スタイルに変わった現在、CPUなんて確信を持って2世代くらい前で十分なわけです。
ただし、廉価版CPUはだめです。古い世代のハイエンド。これが重要です。なぜなら性能を表す数字(CPUの速度)以上に設計思想が違うから。廉価版は一時的にでも“無茶”を想定されていません。

そんなわけでWindows XP搭載モデル、CPUはcore2duoと決まった時点で、丹念に探すと3万円弱でモバイルノートが買えます(これまた2014当時)。
そこで白羽の矢が立ったのが、キーボードに定評のあるThinkPadです。x200の発売された2008年はすでにIBMはlenovoに買収されていましたが、x200シリーズはIBM大和事業所(神奈川県)で設計されたものです。
このシリーズのあと、lenovoのマーケティング戦略により、ThinkPadは大きく設計思想を変えていきますが、x200はIBM設計、lenovo製造とも言える境目モデルです。そういう背負ったものにも心を惹かれてしまい、これにしました。

ただし、この世代のPCにWindows 8.1(当時最新のWindows OS)を載せるには、メモリが致命的に足りません(標準搭載2GB)。
IBM設計のThinkPadのいいところは、モバイルノートであってもパーツがマザーボードと一体化せず、きちんとカスタムできるところです。だからメーカー売りの状態でもX200は微妙に仕様の異なる、いわば亜種がいくつも存在していたようです。
マザーボードの仕様を見ると、公式サイトには載っていませんが、BIOSをチョイチョイとゴニョゴニョしてやると、メモリは8GBまで載ることがわかりました。この辺に、キラリと光る設計思想を感じます。

ついでにHDDも速度のネックになりがちなのでSSDに換装です。HDDよりもSSDの方が持ち歩く際の揺れ・衝撃にも強くなります。

こうして、core2duo、8GB RAM(PC3-8500 4GBx2)、TOSHIBAの高速SSDという、まあまず見ない怪しいモバイルノートが5万円くらいで完成しました。うちに来てから4年経過した2018年でも、そのへんの家電量販店で売ってる最新PCよりも快適に動きます。
この4年間に無線LANモジュールとBluetoothモジュールも、新しいThinkPad用のパーツを流用して動かしています。おかげでWimaxも拾えるし、最初に書いたとおりBluetooth も2.xから4.0へ。4.2や5.0の周辺機器も動きますので、bluetooth自体は4.0以降はしっかり下位互換しています。

NECのLAVIE Zは、世界最軽量を狙うために開発者が命をかけて削った数十グラムのバランスの上に立った日本刀のようなPCなので、そのまま使うのが正義だと思うのです。メーカーと利用者の関係は、命をかけつつもお互いの領域は侵さない刀鍛冶と侍です。
対してこのThinkPad x200は、高次でバランスしつつもカスタムの余地を残した、いわば同業者向けPCであると言えます。
それが端的に現れているのは、10年前の製品にもかかわらず、290ページに渡る、“バラしマニュアル”がウェブサイトにおいてあるところですかね。まあたぶん誰かが置いて放置されているものと見られます。lenovoの公式ページからたどるとこのファイルには行き着くことができません。それどころか、ThinkPad xシリーズにx200が存在してないことになってる……

家でも車でもそうですし、サービスでもそうですが、設計思想、事業コンセプト、あるいはビジョンへの共感って、ものすごく大事だなーと改めて感じる出来事でした。

では、よいPCライフを。

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